4.3 自動車の共同利用

 公共交通機関の利便性が一定レベル以下であると、多くの世帯が自家用車を所有するが、一般人は「自家用車を有効利用したほうが得」という状況の中で、すすんで自家用車を手放すという選択はしないため、環境配慮型交通手段の利用促進が難しい。ドイツで普及しているカーシェアリング制度は、自動車の利用を前提とした制度であり、直接的には環境配慮型交通手段ではない。しかし、カーシェアリング制度は、どうしても必要なときには自動車を利用できるという自由が保たれつつ、「乗った分に比例してかかる経費」が相対的に大きいことから、自家用車の適正利用に役立つ手段であると考えられている。
 日本では、ドイツのようなカーシェアリング制度は普及しておらず、今後の政策としてもあまりとりあげられていない。そこで、現在の日本で普及しているものの中で、自動車の共同利用にあたるものとして、レンタカーについて考察してみた。私は現在、ひとつのレンタカー会社と、3ヶ月間の週末RENTというパックを契約している。契約期間中、金曜日の夜から月曜日の朝まで1500ccクラスの自動車を借りられるもので、1回あたり8500円である(ただし、最低4回利用することを前提として、最初に3万4000円を支払い、5回目以降はその都度8500円を支払う)。大学卒業に先立って、実家への荷物運びなどに利用しているのだが、ノーマイカー主義の私にも重宝している。マイカーと違って、近距離移動や公共交通機関を乗り継いで行ける場所への移動に、ついつい自動車を使ってしまうようなことがない。でも、必要なときには借りられる。自動車の共同利用は、マイカーを持たずして交通手段の自由が利く、画期的なシステムであると実感している。
 ところが、ドイツのカーシェアリングのように、自動車利用を減らして環境配慮型交通手段に転換を図っていく手立てとしては、問題点が少なくない。まず、自宅から約4キロ離れた松本駅前のレンタカー営業所まで行かなければならない。これは、地方都市に限らず、大都市郊外でも同様の制約があろう。私の場合、この程度の距離ならば自転車で移動するのが日常茶飯事であるが、一般人にそれが受け入れられるであろうか。次に、サービス内容が限定的であることがあげられる。私の契約している週末RENTは、各レンタカー会社の料金、サービスを比較して、最も「得」なパックを選んだ結果であるが、車種は指定され、利用できるのは週末だけである。レジャーなどには最適のパックであろうが、平日など任意の日時に利用する場合は、ここまで「得」ではない。各レンタカー会社の料金表に基づくと、1500ccクラスの自動車を6時間借りる際の料金は、7000円〜8000円が相場である。このほか、利用5日前までの予約が原則であるなど、1時間前でも予約可能なドイツのカーシェアリング制度に比べれば、使い勝手はまだまだ劣っている。
 日本のレンタカーも、前章にドイツを例として挙げたカーシェアリングの利点を、基本的には踏襲しているといえる。しかし、既に自家用車を持っている人が、それを手放し、環境配慮型交通手段に切り替えていこうとするには、まだまだ大きな障壁があるといえよう。それでもなお、環境配慮型交通手段の利用促進政策によって窮地に追い込まれがちな自動車会社も、レンタカー事業を一層充実させ、ドイツ並みのカーシェアリング制度を実現させていくことで、「環境配慮に貢献している自動車会社」としての名誉ある地位を築いていく余地は残されているといえる。


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