3.5 環境配慮への主体的な取り組み姿勢
毎年、ドイツ環境援助協会を中心とするいくつかの組織の共催により、自治体コンクール「自然・環境保護における連邦首都」が行われている。自治体の自然・環境保護対策を奨励し、すぐれた対策を他の自治体の手本として公開することが目的である。評価項目は他分野にわたっているが、交通関連の評価項目は以下のようなものがある。
「歩行者ゾーン(自動車進入禁止区域)、歩行者専用道路(自動車進入禁止道路)、自転車専用道路、遊戯道路(時速制限が極端にきびしく、子どもが遊べる道路)が全面積に占める割合。時速30キロ地帯の有無・割合。市町村長は近距離の出張に自転車をつかっているか。市町村の職員のための公用自転車の有無。市町村役所における自転車や公共交通機関使用者への優遇措置の有無。公共交通機関の拡張を財政的に奨励しているか(公営化、あるいは民営の交通企業への赤字補填)。総合交通コンセプトの有無。交通において実行されている環境対策。自動車交通削減のために成功した対策の内容。」(*17)
このような評価項目をクリアしたエッカーンフェルデ市では、観光公害克服のためのエコツーリズムの一環として、自動車交通の積極的な制限を行っている。「まず、市の中心部には自動車進入禁止区域があり、レンガ敷きのプロムナードになっている。(中略)海岸沿いにも生け垣にふちどられた歩行者と自転車専用の海岸プロムナードが長く続く。また、すべての道路の50%には自転車専用道路が設けられている。残りの道路の大半も時速制限30キロ以下の道路だから、専用道路は必要ではない。こうして自転車のためのネットワークは延べ350キロと、自動車交通のそれよりも長い。」(*18) これ以外にも、「ドイツの多くの都市で、自動車交通を少なくするためのいろいろな対策を実行するようになった。市の中心部の駐車場を少なくして駐車料金を高くする代わりに、電車の終点などに無料の駐車場を設けたり、住宅地内の時速制限を30キロメートル以下にするなどは普通になった。町の中心部に自動車進入禁止ゾーンや道路を設ける自治体はますます増えている。」(*19)
ドイツの優れた環境政策は、中央集権的な規制にもまして、各自治体や企業などが主体的に環境配慮に取り組む姿勢を促すシステムが整っているといえる。
*17 | 今泉みね子(1997)『ドイツを変えた10人のパイオニア』白水社,105ページ |
*18 | 今泉みね子(1997)『ドイツを変えた10人のパイオニア』白水社,99ページ |
*19 | 今泉みね子(1997)『ドイツを変えた10人のパイオニア』白水社,86ページ |