3.4 カーシェアリング(*14)
ベルリンで最初のカーシェアリング協会ができて以来、カーシェアリングのステーションは増え続けてきた。現在ではドイツだけでも1万5000人が参加している。カーシェアリング協会の成長率は年に50パーセント以上だという。
カーシェアリングは次のように行われる。(*15)
1. | 年間会費240マルク(約2万円)を払ってカーシェアリングの会員になると、すべてのステーション(駐車場)の「金庫」に合うパーソナルキーをハンドブックが渡される。ハンドブックには自動車のモデルとステーションについての情報が載っている。 |
2. | 自動車の予約。予約は一日のいつでも電話でできる。車がとつぜん必要になっても、1時間前ならたいていは確保できる。車種はミニバスから小型自動車まで希望に応じてえらべる。 |
3. | 予約した車のあるステーションに行き、ステーションの金庫から車のキーを取る。ステーションはレンタカー営業所とちがって、住宅地近くにあることが多い。無人なので、自分で自動車の状態を点検する。幼児用の椅子などの必需品も用意されている。 |
4. | 使用後はふたたびステーションにとめる。出発日時と返却日時、走行距離を帳簿に記入し、金庫に車のキーとともに残す。帳簿の控えは記録のためにもっていく。協会によっては、自動的に個々の移動距離が自動車に記録される場合もある。 |
カーシェアリング協会は自動車の整備や手入れを含め、すべての管理をおこなう。参加者は電話と金庫の鍵を持つだけでよい。車の使用料は使用時間と走行距離に応じて支払う。
カーシェアリングの利点としては、以下の事柄が挙げられている。(*16)
1. | 駐車場代、保険、修理費、洗車など、自動車にまつわる費用と手間がはぶける。 |
2. | いろいろなタイプの自動車を必要に応じて使いわけることができる。 |
3. | 列車などべつの交通手段を使っても、自家用車とちがって「損」にはならないから、移動手段の自由が広がる。 |
4. | 自動車が必要なときにはいつでも乗れる。 |
5. | 乗る回数と距離を減らすほど金を節約することになるので、おのずと自動車利用が減り、公害を少なくする結果になる。 |
ヨーロピアン・カーシェアリング協会によると、1台の自動車がこうした形で共有されるだけで、5台分の車が節約され、1年間に4万2500キロメートルの自動車走行が節約されるという。96年10月にベルリンで開かれたカーシェアリング奨励週間は連邦運輸大臣も後援し、カーシェアリングによってドイツだけでも120万台の自動車をカバーできるはずだとして、このシステムの貢献をたたえた。
*14 | 今泉みね子(1997)『ドイツを変えた10人のパイオニア』白水社,81−83ページを要約 |
*15 | 今泉みね子(1997)『ドイツを変えた10人のパイオニア』白水社,82ページよりまとめた |
*16 | 今泉みね子(1997)『ドイツを変えた10人のパイオニア』白水社,83ページよりまとめた |