2.3 公共交通機関の利便性低下

 前節で引用した佐々木公明・文世一(2000)(*4)では、さらに「その一方で、公共交通の利用者数は減少し、その経営を圧迫している。多くの交通企業は、利用者が減少すると、運行頻度の減少と運賃の値上げを行い、それがさらなる利用者減少を招くという悪循環に陥っている。」と続く。クルマ社会の発展は、公共交通機関の相対的利便性だけでなく、実質的な面での利便性をも低下させてしまったのである。
 現在の日本では、自家用車を利用する際のコストよりも公共交通機関の運賃が高くなってしまう状況であり、環境に配慮した人が報われていない。たしかに、自家用車の利用コストは、車両の購入費、保険料、取得・保有の税、整備・車検などの経費を加味すれば、決して安いものではない。しかし、このような「乗っても乗らなくてもかかる経費」が、燃料費など「乗った分に比例してかかる経費」と比較して相対的に高いため、保有している自家用車は「たくさん乗ったほうが得」という状況が生まれている(*5)
 このような状況では、環境配慮型交通手段の利用を促進させる際の障壁になるばかりでなく、現在の利用者を遠のかせる要因にもなりかねない。したがって、エネルギー多消費型の自動車から、環境配慮型交通手段へシフトさせていくためには、自家用車の利用コストよりも公共交通機関の利用コストが安くなるよう、何らかの経済的手段も含めて対策を講じる必要がある。


*4 佐々木公明・文世一(2000)『都市経済学の基礎』有斐閣アルマ,165ページ
*5 国立環境研究所ホームページ” http://www.nies.go.jp/sympo/2001/qanda/01-moriguchi.html ”
「国立環境研究所 公開シンポジウム2001(環境の世紀の幕開け)」(2001年7月19日開催)の 第2セッション・第2講演「人と環境にやさしい新世紀の交通・物流を考える」(森口祐一)の際、アンケート用紙で私が尋ねた質問に対して、講演者が後日回答したものを参考にした。

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