2.2 自動車を前提にしすぎた道路整備

 佐々木公明・文世一(2000)(*3)では、「戦後、アメリカをはじめとする世界の多くの大都市では、自動車の急速な普及に伴って、都市内のいたるところで混雑が発生した。これに対して、道路の整備が行われたが、そのわりに混雑の解消は遅々として進まなかった。道路を整備すると、確かに一時的に交通条件が改善されるものの、それを知ると、改善前は自動車を利用していなかった人々も新たに自動車を利用するようになるので、整備による効果を相殺してしまうのである。」と説明されている。自動車が増加すると、自動車ばかりが便利なように道路が整備され、自動車ばかりが便利なように道路が整備されると、自動車が増加する――この繰り返しが、クルマ社会をどんどん発展させたといえる。
 この過程において、歩道や自転車道が整備された一部の道路はともかく、歩行者や自転車を道路の片隅に追いやるだけ追いやって、自動車がわがもの顔で走るような道路が多くなった。そして、環境保護に最も貢献しているはずの歩行者や自転車が不便になるとともに、危険にさらされる状況が続いているのである。

 エネルギー多消費型の自動車から、環境配慮型交通手段へシフトさせていくためには、自動車を前提にしすぎた道路整備のあり方を改め、環境配慮型交通手段の相対的利便性がこれ以上低下しないように努める必要がある。そのためには、自動車の利用が多少不便になることを厭わない姿勢で、環境配慮型交通手段の利便性を可能な限り向上させることが重要であると考えられる。


*3 佐々木公明・文世一(2000)『都市経済学の基礎』有斐閣アルマ,164−165ページ

前へ   次へ