2.1 自動車の特性

 今野・岡野(1979) (*2)によると、「自動車交通は偏在している道路網をルートを限定されることなく利用できるので出発地と目的地の組み合わせが限定されない。(中略)『戸口から戸口へ』の交通――最初の出発地から最終目的地までのトリップ――が単一の交通手段で行なえる」として、自動車が「線的交通手段」としての性格も兼ね備えた「面的交通手段」であると論じている。
 最もエネルギー効率の良いとされる鉄道も、出発駅と到着駅だけでトリップが完了するケースは少なく、出発点から出発駅まで、および到着駅から目的地までの移動に、他の交通手段を必要とするケースが一般的である。結節点ごとの徒歩での移動、乗り換えの手間や、その結果としてトリップの所要時間が大きくなることを嫌う人々が、自家用乗用車に魅力を感じ、自動車保有台数が年々増加傾向をたどることは、無理のない帰結であろう。
 以上のような観点から、何らかの誘導策なくして、エネルギー多消費型の自動車から、環境配慮型交通手段へシフトさせていくことは、非常に困難であると考えられる。


*2 今野源八郎・岡野行秀(1979)『現代自動車交通論』東京大学出版会,44ページ

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