1.3 自動車交通によるCO2排出量を削減する方法

 エネルギー消費原単位でみると、鉄道は、1人を1km運ぶのに自家用乗用車の約6分の1、営業用バスは約3分の1のエネルギーしか使わない(図1-3-1)。CO2排出原単位でみると、道路渋滞などで発進、停止を小刻みに繰り返す自動車交通と、主に安定した電力で動く鉄道等とで、この差はさらに顕著になる。1人を1km運ぶのに排出するCO2は、自家乗用車からのそれが圧倒的に多い(図1-3-2)。

 エネルギー資源を無駄にしない、空気を汚さないという点では、徒歩や自転車が最も優れた交通手段であるが、それらではカバーできない中・長距離の移動に関しては、以上のデータから、公共交通機関がより環境にやさしい交通手段であるといえる。
 もちろん、自家用乗用車すべてを無くすことは現実的でなく、必要最低限の範囲で自家用車の利用を認めることも視野に入れておくべきである。したがって、燃費向上など、自動車単体からの排出原単位を引き下げる努力も重要である。しかし、自動車の単体対策などの対策効果が、自動車保有台数の増加に伴う走行量の大幅な伸びなどに相殺されているため、自動車排出ガスの総量が低減していないのが実状である(環境白書)。また、鉄道等においても単体対策が進んでいる(*1)ため、自動車の単体対策が進展してもなお、輸送効率が確保される限りにおいて、やはり公共交通機関が環境に優しい交通手段であることに変わりはない。
 以上のような観点から、エネルギー多消費型の自家用乗用車のさらなる増加に歯止めをかけつつ、徒歩や自転車と公共交通機関をうまく組み合わせた環境配慮型の交通手段の利用を促進することが、地球温暖化への寄与が大きい自動車交通対策の効果的な方法であると考えられる。この論文では、環境配慮型交通手段の利用者が優遇されているドイツの制度を参考にしながら、ドイツのそのような政策はなぜうまくいっているのか、そして、自家用車が多く利用されている日本で、同様の政策を実践しようとする場合の問題点とその解決方法について考察する。


*1 「京浜東北線を走る209系や総武線各駅停車のE231系車両は、旧形式(103系)に比べて47%の消費エネルギーで走行することができる。」(東日本旅客鉄道株式会社 広報パンフレット『Destinations』33ページ)

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