総括
わが国のCO2総排出量のうち産業部門が約4割を占める(前掲 図1-2-1)中、企業のグリーンパスポートとしての環境ISO(14000シリーズ)発効などにより、企業自身が主体的に環境配慮に取り組めるシステムが整いつつあることは、大いに評価できる。このように、環境貢献型の企業が優位に立てる社会になってきた一方で、個人の生活様式のレベルで見ると、環境貢献型の生活様式が必ずしも優遇されていない。そのひとつが交通手段である。企業社会では、環境にやさしい経営に関して、そのイメージが企業利益に結びつくと考えられるようになってきたが、個人間では、環境にやさしい生活様式に関して、そのイメージが本人の利益につながることは稀であろう。 | |
それゆえに、環境配慮型交通手段の利用を促進していくにあたっては、公的な支援策が大きな意味を持つことになる。基本は、交通手段の選択の自由を確保しつつ、環境保護に貢献している人を優遇することである。徒歩、自転車、公共交通機関の快適性や利便性が乏しいと、環境保護を真剣に考えている一部の人にしか、それらの利用促進は馴染まない。大規模に環境保護を進めていく上では、歩道、自転車道、公共交通機関の諸施設、それぞれの結節点の整備や、利用コスト低下を支援しつつ、現実問題として自動車の利便性を認め、パーク・アンド・ライドやカーシェアリング等を含めた環境政策を積極的に進めていくことが重要である。このような政策を行うにあたっての社会的合意を得るためには、環境問題に関する教育、広報も重要である。 |